品川の街中にひっそりと佇む「手打ちそば 翁」。のれんをくぐれば、空気の密度が少しだけ変わるような、静かで張り詰めた時間が流れている。
今日いただいたのは「鴨せいろ」。中でも“猿鴨せいろ”というメニューがあり、東京ではあまり見かけない組み合わせに少し心が躍った。つゆはかなり濃いめ。まるで黒蜜のように黒く、塩味も強めだが、鴨の脂と香ばしさとよく合っている。
そば湯がまた印象的だった。こちらも濃いめで、ぽってりとしたとろみがあり、飲み応えがある。最後の一滴までしっかりとそばの余韻を味わえるような仕上がりだ。
店内はあまり広くなく、席の配置も向かい合わせになりがちなので、自然と会話は控えめになる。実際、客のほとんどが一人で訪れていて、みな黙々と蕎麦に向き合っていた。その空気に飲まれたわけではないが、自分もまた静かに箸を運ぶ。
インテリアは昔ながらの典型的な蕎麦屋のもの。木の質感があたたかくもあり、どこか背筋が伸びる雰囲気がある。食器も同様に、派手さはなく実用的な、馴染んだ和の器。
ホールスタッフは声がけも明るく、きびきびとした動きでとても好印象だった。一方、キッチンはやや張り詰めた空気。職人の緊張感が漂い、蕎麦という食に対する厳しさのようなものが垣間見える。
全体的にとてもおいしく、静かな満足感が残った。ただ、それは“楽しい食事”というより、“向き合う時間”に近い感覚だったかもしれない。
次回は、より素朴で風味の強い「田舎そば」を試してみたい。そして、寒い季節には「鴨南蛮」も、きっと良いに違いない。
- 店名:手打ちそば 翁(おきな)
- 住所:東京都港区高輪または品川区近辺(詳細は現地確認)
- 音楽:
- インテリア:昔ながらの蕎麦屋らしい内装。木の温もりがあり、落ち着いた雰囲気
- 食器:昔ながらの和食器。派手さはなく馴染みのあるもの
- ホール:声がけ明るく、動きもきびきびとしていて好印象
- キッチン:職人の緊張感が漂う。張り詰めた静けさあり
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