成田第一ターミナルにて、旅の端緒
第一ターミナルのラウンジに腰を落ち着け、ひとまずの安息を得たり。

ふと空を見上げしに、バイプレーン潰れて久しきか。聞けば、当ターミナルはまもなく大改装に入るとの由。

送迎デッキもまた来春まで閉鎖なりとは、旅人の楽しみ一つ減りし感あり。

目をつけておりし床屋も、遂に閉じられたることを知る。
その張り紙に「閉店のお知らせ」とあるを見て、何やら時代の変わり目に立ち会う思い。

ラウンジにては、静寂と共に食事を味わふ。
人影まばらにして落ち着きあり。ワインの赤、左の銘柄はなかなかに口に合い、些か悦に入る。

さて、いよいよ飛び立つ刻となりぬ。

釜山への移動と街歩き
ほぼ定刻にて金海空港に降り立ち、一時間あまりの車中を経て西面の宿に到着す。
快晴なれど、空は黄砂に霞み、春の夢のごとし。

昼餉は南浦洞の元山麺屋にて咸興冷麺を賞味す。甘辛き味わい、喉ごし軽やかにして、やはり旨し。量は幾分少なきも、鶏がらスープの変化に気づく。以前の化調味薄まり、素朴な味わいに立ち返りたり。
十四千ウォン也。

朝鮮通信使歴史館にて
歴史館にて、ただ一人展示物を眺むるうち、学芸員の方より日本語にて懇切丁寧なる説明を受く。聞けば、二十年にわたりこの仕事を続けし方とのこと。熱意と知識に感服す。
展示はすべて複製なれど、その情熱により生命を帯びるかの如し。貴重なる出逢いに感謝の念深し。
折しも、朝鮮通信使関連の催しが今日より始まる由。復元船、明日対馬へ向かうと聞く。たしかに、後から多くの見学者が押し寄せたり。

街の彩りと午後の憩い
ホテルに戻り、アフタヌーンティーを楽しむ。メロンの傍らに添えられし紫の細き果実は、葡萄なり。

その後、ロッテ百貨店光復店の屋上庭園より釜山タワーを望む。
風清く、心も澄む。

愛らしき犬に遭遇す。ぬいぐるみかと思ひしが、まことの生き物なり。

カフェインを取り、ジムにて身体を動かし、プール、サウナと続けてこなす。旅先にて己を律すること、快し。


済州島へと渡る
エアブサンにて済州へ。

宿近くの店にてチゲを食す。夜は雨に見舞われ、灯りに濡れる街を歩む。

翌朝はカムジャタンをしっかりと頂く。旅先では朝こそ力の源なり。

今日の天候は申し分なく、潮風やわらかく、街歩きに最適な日和。朝の食べすぎゆえ、昼餉は控えるつもりでいたが――

東門市場にて思いがけぬ鯖との出逢い
されど市場の香りと活気に誘われ、旬の塩鯖焼き定食を見つけてしまい、つい手を伸ばす。

その大きさ、香ばしき焼き加減、脂ののり、いずれも見事。小骨もよく焼かれ、歯に障らず。刺身の副菜も昆布締めらしき工夫あり、生臭さなど皆無。テンジャンチゲに含まるるワカメの旨みもしっかり。
かくも完璧な鯖に出逢いしこと、旅の幸運と申すべし。
旅の終わりに
夕陽が海を染める刻、今日一日が静かに幕を下ろす。神々しき光に、心洗われる思いす。


空港国際線のラウンジにて、ピリ辛炒飯を食す。今日初めてのまともな食事かもしれぬ。

今回の旅、まことに実り多きものなり。快晴多く、歩くに心地よく、また人との触れ合いに富み、知識と味覚に新たなる発見あり。
博物館にては日本語による解説を受け、往時の記録に深く接することが叶った。済州島にては絶品の鯖に舌鼓を打ち、今が旬という味わいを最良のタイミングで享受できしは、天の配剤か。
土地の者が愛し食すものには、理屈を超えた真実の旨さがある。
また訪れたいと心に誓いつつ、この幸運な旅を胸に刻み、筆を擱く。
コメント