北品川の旧東海道沿いにある「そば処いってつ」は、まるで時代をひとつ跨いだような不思議な存在感を放つ蕎麦屋だ。東海道らしい面影が残る通りの中で、堂々とした佇まいと広い店内に、どこか懐かしさを感じる。
店に入ると、まず驚くのはその広さ。昔ながらの蕎麦屋にしては珍しいほど奥行きがあり、座敷も完備され、大宴会でも開けそうな規模感だ。音楽は流れておらず、時折鳴るスマホ注文の通知音と、店員の元気なやり取りが空間を埋めている。
今日いただいたのは、品川名物の海苔がたっぷりと使われた蕎麦。見た目にも楽しく、波のようなたっぷりの海苔が印象的。お蕎麦自体はクセのない、いわゆる“普通のお蕎麦”だが、つゆやトッピングに工夫があって面白い。
特に印象に残ったのが、揚げたての揚げ玉と、甘辛く煮た貝。しっかりと生姜の風味も効いていて、味わいに奥行きがあった。ピリ辛のつゆも卵と相性が良く、本来は生卵を途中で投入して味変を楽しむスタイルとのこと。今回は初めからかき玉にしてもらったが、それでもしっかりおいしかった。
壁には地元商店会のお知らせやお祭りのポスターが多く貼られていて、この店が地域に深く根付いていることが伝わってくる。アニメ調のちょんまげイラストのロゴやサインが飾られており、若者や観光客にも親しみやすい工夫が見られるのも印象的だった。
お昼時、近隣で働く人々がぞろぞろと集まり、賑やかに食べてまた仕事へ戻っていく──そんな日常が息づく「そば処いってつ」は、ただのお蕎麦屋さんではない。町を支える一部として、静かにその役割を果たしている。
- 店名:そば処いってつ
- 住所:東京都品川区北品川(東海道通り・旧東海道沿い)
- 音楽:なし
- インテリア:昔ながらの蕎麦屋と居酒屋の雰囲気が融合。広く、奥には座敷あり。アニメ調のイラストも
- 食器:昔ながらの食器。波模様の演出など工夫あり
- ホール:スマホ注文システム導入。注文音が響く中、スタッフは忙しくもテキパキと動いている
- キッチン:活気があり、注文に応じて手早く調理されていた


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