1 今日のテーマ プリオラートの石の気配を帯びた重厚赤を読む
今回取り上げるのは、スペイン・カタルーニャ州プリオラートの赤ワイン「リコレッリャ ヴィティス 2019」である。
プリオラートは、凝縮感ある赤ワインで知られる産地なり。陽光は強く、畑は石を多く含み、葡萄は水を求めて深く根を伸ばす。その土地の性格は、杯の中で黒果実、スパイス、乾いた土、鉱物、樽由来の香ばしさとなって現れやすい。
本記事では、このワインの基本情報、味わいの方向性、料理との合わせ方、そして実際にローストビーフと合わせた印象を、実務と余韻に分けて整理する。
2 基本情報 リコレッリャ ヴィティス 2019の産地・品種・味わい整理
正式名称:リコレッリャ ヴィティス 2019
原語表記:Llicorella Vitis 2019
産地:スペイン、カタルーニャ州、プリオラート
造り手:Celler Unió
品種:ガルナッチャ、カリニェナ/マスエロ
タイプ:赤ワイン、重厚・凝縮・ミネラル・樽熟成系
価格:販売ページ確認では税込10,180円
確認年:2026年時点
公式情報出典:輸入販売元の商品ページ、プリオラート関連資料
記載状況:価格・在庫・輸入条件は変動するため購入時要確認
「リコレッリャ」とは、プリオラートを象徴するスレート、粘板岩系の土壌名である。痩せた石の多い土地で、水分保持力は高くない。そのため葡萄は地中深くへ根を伸ばし、収量は自然と抑えられ、果実には密度が生まれやすい。
この土壌由来の印象として、黒い石、乾いた土、煙、鉄、鉱物的な硬さが語られることが多い。ワインの香味においては、ブラックチェリー、プラム、カシス、カカオ、バニラ、トースト、スパイス、熟成に由来するレザーのようなニュアンスが想定される。
味わいは、濃いルビーレッド、熟した黒果実、カカオ、香ばしい樽香、しなやかなタンニン、長い余韻を軸とする構成であろう。ガルナッチャによる熟した果実味に、カリニェナが酸、骨格、締まりを添える。甘く丸いだけでなく、やや野性味と硬質感を持つ点が特徴といえる。
料理合わせは明確である。牛もも、ランプ、イチボ、鹿、鴨、ラム、牛すねの赤ワイン煮、きのこソース、黒胡椒を効かせたステーキ、熟成チーズに向く。脂の強い霜降りよりも、赤身肉の鉄分、焼き目、香ばしさ、ソースのコクと合わせる方が、ワインの鉱物感とタンニンが生きやすい。
飲み方は、抜栓直後よりも少し時間を与える方がよい。大きめのグラスを用い、30〜60分ほど置く、または軽くデキャンタージュすると、香りが開きやすい。温度は16〜18℃を目安とする。高すぎるとアルコール感や樽香が前に出やすいため、やや低めから始めると輪郭が整う。
※価格は税込10,180円として記載。為替換算ではなく国内販売価格に基づく。販売価格・在庫は購入時要確認。

3 旅の情景 ローストビーフと青きチーズに寄り添いし、黒き石の赤ワイン
グラスに注ぐと、色は濃く、夜の底にまだ赤き火を残したようであった。軽やかに透ける赤ではなく、黒果実を抱えた深い赤である。テーブルの上にはローストビーフ、バターとガーリックの香りをまとったマッシュポテト、そして少量のワサビ塩が置かれていた。
肉をひと切れ口に運ぶ。表面にはわずかなスモーキーさがあり、噛むほどに赤身の旨味が静かに広がる。そこへワインを含むと、果実の甘やかさより先に、硬質なコクが立ち上がった。石を思わせる冷たさ、樽の香ばしさ、黒い果実の厚みが、肉の焼き目とよく結びつく。
バターガーリックのマッシュポテトは、料理全体に丸みを与えていた。にんにくの香り、乳脂肪のなめらかさ、じゃがいもの甘み。それらがワインのタンニンを柔らかく受け止め、杯の印象を少しずつ穏やかにしてゆく。強い赤ワインは、ときに料理を押しのけることがある。されどこの組み合わせでは、肉と芋と酒が互いに場所を譲り合っていた。
ワサビ塩を少し添えると、景色が変わる。ワサビの清涼感が脂とバターを切り、塩が肉の旨味を前に出す。そこへワインの黒果実と鉱物感が重なると、甘さではなく、締まりのある余韻が残った。濃い赤でありながら、ただ重いだけではない。石のような硬さが、食卓に一本の芯を通していた。
食後にはブルーチーズを少しいただいた。青かびの塩気、乳の濃さ、鼻へ抜ける香りは強い。だが、ワインもまた十分な力を持っている。カカオ、樽、黒果実、熟成感が、チーズの塩味と発酵香を受け止め、食後の小さな一皿を豊かなものにした。
このワインは、華やかに笑う酒というより、食卓の奥に腰を据える酒である。肉の焼ける匂い、皿に残るソース、少し溶けたバター、チーズの塩気。そうした料理の陰影に寄り添うとき、プリオラートの黒き石は、静かにその力を現す。
4 結び リコレッリャ ヴィティス 2019は赤身肉と熟成チーズの日に向く一本
リコレッリャ ヴィティス 2019は、スペイン・プリオラートらしい凝縮感、黒果実、樽香、鉱物感を楽しみたい日に向く赤ワインである。軽やかに飲む日よりも、肉料理を中心に食卓を組み立てる日に選びたい。
よい点は、赤身肉、スモーキーな焼き目、黒胡椒、きのこ、熟成チーズとの相性が明確なこと。注意点は、繊細で淡い赤ワインを求める日には、やや重く感じられる可能性があること。また、温度が高いとアルコール感や樽の印象が強く出やすいため、少し低めから飲み始めるのがよい。
再び飲むなら、牛ももやランプのステーキ、鹿や鴨、あるいは牛すねの赤ワイン煮と合わせたい。大きめのグラスを用い、時間をかけて香りの変化を見る。濃い赤ワインは、急がず向き合うほどに、その土地の声を聞かせてくれるものなり。

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