1 今日のテーマ 運賃改定前に挙行せし、亀戸餃子を目的とする小さき遠征
2026年3月
JR東日本の運賃改定が今週土曜日、3月14日に迫ると聞けば、日常の移動さえ少しばかり惜しく感じられるものなり。値上げ前に一度、近場でありながら少しだけ非日常の匂いを帯びた場所へ出向こうと思い立ち、亀戸へ向かうこととした。
目的は実に明快である。亀戸餃子を食べる。ただそれだけなり。観光名所を巡るでもなく、名店を何軒も梯子するでもない。餃子を食べ、古本屋を覗き、錦糸町まで歩く。これだけの行程であっても、心持ち一つで旅は成立するのである。
2 基本情報 亀戸餃子と亀戸・錦糸町ブックオフ巡りの実務整理
・訪問時期:2026年3月
・主目的:亀戸餃子で餃子を食すこと
・主な行程:
亀戸駅
→ ブックオフ亀戸駅東口店
→ 亀戸餃子
→ 徒歩で錦糸町方面へ
→ 錦糸橋から日鐵NDタワーと東京スカイツリーを望む
→ ブックオフ ロッテシティ錦糸町店
→ 駅高架下のロッテリア
→ 錦糸町駅から総武線・横須賀線直通快速で品川へ
・亀戸餃子:
餃子一択の店
一皿5個330円
今回は6皿、計30個を完食
東京青梅の地酒・澤乃井の熱燗も注文
合計2,365円
平日は比較的空いており、ゆっくり食べられる
土日は混雑しやすいとの店員談
・ブックオフ亀戸駅東口店:
昔ながらのブックオフらしい雰囲気
値付けは比較的安め
単行本220円からあり
前から読みたかった『黒い海』を220円で購入
・ブックオフ ロッテシティ錦糸町店:
亀戸店より値付けは高めの印象
廉価本でも390円から
昨年10月刊行の『財務官僚から税を取れ!』を発見
550円だったため少し迷ったが、ブックオフポイント約120円分を使って購入
・錦糸町高架下ロッテリア:
フェアトレードアイスコーヒー330円
Vカードで支払い
久方ぶり、あるいは人生最後かもしれぬロッテリアとして印象に残る一杯
・移動面:
亀戸から錦糸町までは徒歩移動
錦糸橋から、かつて通った日鐵NDタワーと東京スカイツリーを眺望
帰路は総武線・横須賀線直通快速で品川へ
座席にも余裕があり、15時20分発のシャトルにも間に合った
・この行程に向く人:
餃子が好きな人
古本屋巡りが好きな人
近距離散歩を旅として楽しめる人
亀戸・錦糸町の生活感ある街歩きを味わいたい人
・実務的なおすすめ:
亀戸餃子は平日訪問が狙い目
ブックオフは亀戸店と錦糸町店で価格帯が異なるため、比較しながら回ると面白い
餃子の後に錦糸町まで歩くと、食後の腹ごなしと街の変化の観察を兼ねられる
3 旅の情景 餃子の湯気、川風、三十年前の記憶、そして錦糸町の異国情緒
亀戸駅に降り立つと、久方ぶりの街の空気が身体に入ってくる。約4年半ぶりの亀戸方面である。駅前の雑然とした生活感、商店の看板、行き交う人々の足取り。そのいずれもが、観光地ではなく「日々が営まれている街」の顔をしていた。
まず向かったのはブックオフ亀戸駅東口店。店構えには、近年の小綺麗に整えられた大型店舗とは違う、どこか昔ながらの古本屋的な温度が残る。棚を一つずつ眺め、背表紙を追い、思いがけず目当ての本と出会う。この瞬間こそ、ブックオフ巡りの醍醐味であろう。『黒い海』を220円で見つけたときの小さな勝利感は、旅先で良き土産を得たようなものなり。
その後、いよいよ亀戸餃子へ。かなり混んでいるのではないかとの予想は、全くの杞憂に終わった。入ってみれば拍子抜けするほどすんなり座れたのである。肩透かしと言えばそれまでだが、むしろこれは幸運であった。店内には餃子の焼ける香りが漂い、皿が置かれるや否や、食事は静かに始まった。
餃子は小ぶりで軽やか。皮は薄く、焼き目は香ばしく、口に運ぶと熱がふわりと広がる。いくつでも食べられる危険な餃子である。最初の一皿は様子見、二皿目で調子が出て、三皿目からは完全に流れに乗った。気づけば六皿、三十個。東京青梅の地酒、澤乃井の熱燗も添え、腹も心も満ちたり。
この餃子は、昨年春に宇都宮で食した餃子よりも、むしろ好みに合うと感じた。もちろん名物には名物の格式がある。されど、結局のところ食の記憶を決めるのは、看板の大きさではなく、自分の舌が素直に喜ぶかどうかであろう。
店員の方の「平日は空いているので、ゆっくり食べてください」という言葉も嬉しかった。混雑店で急かされるように食べるのではなく、自分のペースで皿を重ねる。これだけで味の印象は随分変わる。餃子そのものの美味さに加え、店の空気が柔らかかったことも、この日の満足度を高めた。
腹を満たした後は、錦糸町方面へ歩く。横十間川にかかる錦糸橋から、かつて通った日鐵NDタワーを眺めた。1994年から1996年夏まで、鶴見の会社寮から通っていた場所。もう三十年前である。建物そのものは今もそこにあるが、こちらの時間だけが大きく進んだように感じられる。
橋の反対側には東京スカイツリーが見える。三十年前には想像もしなかった風景である。かつての勤務先の記憶と、現代東京の象徴が同じ視界に入る。その奇妙な重なりに、都市とは過去を消すのではなく、上書きしながら残していくものなのだと感じた。
錦糸町へ近づくと、タイ人の店が連なる一帯に入った。昔、都内有数のタイ人街と聞いた界隈である。まだその名残があることに、少し安心した。当時のタイは、今ほど観光大国として身近な存在ではなかった気がする。今やタイから日本へ観光客が訪れ、バーツの存在感も増した。人の流れも、貨幣の力も、街の意味も変わっていく。
ロッテシティのブックオフでは、再び棚を巡る。亀戸店とは値付けが違い、同じブックオフでも店舗ごとの空気と価格がこうも違うのかと感じる。古本屋巡りは、単なる買い物ではなく、街の経済感覚を測る行為でもある。550円の本を前にしばし迷い、ポイントを使って購入する。その小さな逡巡もまた、旅の記録の一部である。
最後に駅高架下のロッテリアへ入った。おそらく人生最後のロッテリアになるかもしれない、などと思いながら、フェアトレードアイスコーヒー330円をVカードで支払う。最後と言いながら、前回いつ入ったかも思い出せない。もしかすると前世紀以来ではないか。そう考えると、何気ないチェーン店の一杯にも、妙な感慨が宿る。
亀戸駅に続き、錦糸町駅のスタンプも入手。これで小さな旅の証拠が一つ増えた。総武線・横須賀線直通快速に乗れば、品川まで余裕で座ることができ、さらに15時20分発のシャトルにも間に合った。最後まで無駄のない、実に効率的な旅であった。
4 結び 小さき移動にも、記憶と発見は宿る
今回の旅は、距離でいえばごく短い。目的も、餃子を食べることと古本屋を巡ることに過ぎない。けれども、亀戸の古本棚、餃子の湯気、錦糸橋から見た三十年前の記憶、錦糸町のタイ人街の名残、そしてロッテリアの一杯まで、すべてが一日の流れとして結びついた。
最も印象に残ったのは、亀戸餃子の美味さそのものに加え、街の中に残る時間の層である。三十年前の記憶、四半世紀前のブックオフ価格、前世紀以来かもしれぬロッテリア。その一つ一つが、現在の移動の中でふいに顔を出した。
大きな旅でなくともよい。遠方へ行かずともよい。ひと駅、ふた駅の移動にも、過去を思い出し、街の変化を観察し、小さな満足を得る余地は十分にある。
この日の教訓は一つ。旅とは距離ではなく、目の向け方で決まるのである。

コメント